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ウクライナ侵攻、ロシアはどこまで〈悪〉なのか【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」41

2022年5月9日にモスクワで行われた、ロシアの対独戦勝記念式典。軍事パレードを観覧するプーチン大統領。

 

ウクライナ侵攻、ロシアはどこまで〈悪〉なのか

 

◆侵攻の経緯を振り返る

 ロシアのウクライナ侵攻が始まって、もうすぐ3ヶ月となります。

 当初は首都キーウ(キエフ)があっさり攻め落とされたあげく、ウォロディミル・ゼレンスキー政権が倒され、親ロシアの傀儡(かいらい)政権にすげ替えられて終わるのではないかという見方が強かった。

 侵攻が始まったのは224日ですが、3月はじめの時点では、ゼレンスキーはじめ同国政府首脳をポーランドかルーマニアに脱出させ、亡命政府を樹立させてはどうかという案が、アメリカ政府などで内密に検討されていたとまで言われるほど。

 

 しかしゼレンスキーは持ちこたえる。

 キーウにとどまったまま、欧州議会を皮切りに、英国、カナダ、アメリカ、ドイツ、イタリア、日本、フランスなど、各国議会で立て続けにビデオ演説を行い、英雄として賞賛されます。

 わが国の国会演説と、フランス議会での演説など、同じ323日になされました。

 

 他方、ロシアの作戦も予想されたようには進まない。

 ウクライナ自体が持ちこたえたのです。

 3月末になると、キーウ周辺からロシア軍の撤退が始まり、制圧に失敗したことは明らかとなりました。

 4月以後、ロシアの攻撃はウクライナ東部、いわゆるドンバス地方や、黒海(北東部の内海「アゾフ海」を含む)に面した南部に集中するものの、黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が、ウクライナの対艦ミサイル攻撃で沈没したことが示すとおり、ここでも苦戦を強いられます。

 

 けれどもウラジーミル・プーチン大統領は停戦に応じず、侵攻を続ける姿勢を見せている。

 5月9日、対独戦勝記念日の演説でも、「われわれはいまだドンバスのために、ロシアの安全のために戦っている」とぶち上げました。

 状況次第では、化学兵器や戦術核兵器の使用に踏み切るのではないかという推測もあり、事態は予断を許しません。

 

 そうでなくとも今回の侵攻と、それに対応したロシアへの制裁は、世界経済に大きな影響を与えています。

 とくに懸念されるのが、食糧とエネルギー価格の高騰。

 IMF(国際通貨基金)は4月19日、今年の世界経済の成長率予測を3.6%に下方修正しました。

 1月時点では4.4%でしたから、大きくブレーキがかかった形です。

 

 さらに顛末いかんでは、台湾や尖閣諸島など、日本周辺の国際情勢にも大きな影響が生じるかも知れません。

 

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【佐藤健志氏によるオンライン読書会のお知らせ】

 

 ウクライナ侵攻と関連して、Zoomによるオンライン読書会を下記の通り開催します。

 「強兵なくして主権なし〜ロシアの視点を理解して、日本が取るべき戦略をつかめ」

 

 ◆開催日時:2022年6月18日(土)14:00〜16:00

     講義  14:00〜15:30

     Q&A 15:40〜16:00

※質問多数の場合、Q&Aコーナーの時間を延長します。また参加者全員に録画アーカイブを配信しますので、リアルタイムでご参加いただけない方も安心してお申し込み下さい。

 

解説書籍:『「帝国」ロシアの地政学』(小泉悠、東京堂出版、2019年)

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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